パラゴムノキの天然ゴム合成酵素複合体の構造・機能解析

概要

天然ゴムは様々なゴム製品の原料として重要ですが、その供給源である熱帯性植物のパラゴムノキにおける生合成機構は完全には解明されていません。私たちはシス型プレニルトランスフェラーゼという酵素の一種であるHevea Rubber Transferase 1(HRT1)がパラゴムノキにおける天然ゴム合成酵素本体であることを世界で初めて明らかにし、無細胞タンパク質合成系を用いて、試験管内ゴム合成を可能にしました。また、HRT1が天然ゴムの細胞内貯蔵器官であるゴム粒子の脂質膜上で他のタンパク質と複合体(マシナリー)を形成することを明らかにしました。現在は、このマシナリーの構造・機能解析や、試験管内ゴム合成を応用した非天然型のゴム合成を進めるとともに、将来的に天然ゴムの代替合成が可能となるように研究を続けています。

天然ゴム:植物が合成する超長鎖ポリイソプレン

パラゴムノキ

パラゴムノキ
天然ゴムはパラゴムノキという熱帯性植物から生じる樹液(ラテックス)に含まれているゴム粒子の内部に合成されます。タイヤや医療用器具など、産業的に利用されている天然ゴムは、この植物から採取されるラテックスを原料としています。

ゴム粒子は脂質一重膜と、膜表在性タンパク質で覆われています。この脂質膜上に存在する酵素がイソプレン単位であるイソペンテニル二リン酸 (IPP) をシス型に連続的に縮合することで天然ゴムを生合成します。その分子量は約2万から350万とされています。

天然ゴム合成酵素とパートナータンパク質

ゴム粒子の脂質膜上には、天然ゴムの生合成を行う酵素本体であるHRT1と複合体を形成するパートナータンパク質として、Rubber Elongation Factor(REF)やHRT1-REF Bridging Protein(HRBP)が存在し、それぞれがHRT1のゴム合成活性と密接に関連した役割を果たすことが考えられています。しかしながら、これらのタンパク質の詳細な機能や構造については未解明な部分が多く、他の生物におけるホモログの研究も活発に行われています。本研究室では、タンパク質間の相互作用や、それぞれの立体構造に関する知見を得ることなどを通して、マシナリーの実像に迫ることを目指しています。